
ブラック・ジャック
天才的な腕を持つ外科医だが、無免許で、莫大な治療費を請求するブラック・ジャック
(以下、B.J)
彼は例え法律に違反しようとも、己の信念に基づいて行動する。
助手で、奥さんで、娘でもあるピノコや、安楽死専門の医者、Dr.キリコなど、個性豊かな登場人物達、また
患者では、手塚治虫のスター・システムにより、他の作品のキャラクターが多数出演しています。
短編だけあって、様々なメッセージが込められています。
そのうちに、人物像からもメッセージを探ってみたいと思っています。
掲載本は、リンク先の「ブラックジャック掲載順リスト」を参考にさせてもらっています。
(第6話)海賊の腕
器械体操がうまく、人気者だった少年が、腕の腐ってしまう病気にかかってしまった。
しかし、若さゆえか、医者の言う事を聞かずに体操を続け、とうとう腕を切断しなければ、
命さえ危険な状態にまでなってしまう。
担当の手塚医師(手塚治虫)は、少年が体操ができない事により、
将来の望みを無くしてしまうのではないかと
心配し、かつて、その絶望から立ち直った事のあるB.Jに相談する。
手術が済み、義手を付けて登校した少年を待っていたのは、遠巻きに見る学友たちだった。
その義手の形から、彼はいつしか「海賊」と呼ばれるようになる。
落ち込み、体操ができないことに苛立ち、義手に怒りをぶつける彼だが、突然、義手がしゃべりだす!
「体操が出来なくても、他に何かできるようになれ!」と、
そして
「将棋がうまいから、勉強して日本一になれ!自分がついていて、力になる。」と言う。
少年はがんばって、将棋地区大会の決勝戦まで勝ち残る。
そこで、彼は義手に対して「ここまで来れたのは、おまえのおかげだ」と、感謝の言葉を口にする・・・。
死にたいくらいガックリきた時や、ショックな事があった時、人はどうやって立ち直るのだろうか?
いろいろな方法があるだろうが、B.Jは、特別製の義手によって、彼に別の生きがい(目標)
を
与えることで、
見事に立ち直らせ、将来に夢や希望を抱かせる事に成功した。
少年を見守るB.Jは、心の医者でもあるのかもしれない。
また、別の「復讐こそわが命」という作品でも、爆弾で家族を殺され、自分の体も
ボロボロに
なった女性に、復讐という目標を持たせて、生きる気力を与える、という話もあります。
どんな状況でも、自分なりの目標や、生きがいがあれば、がんばる事が出来る、
ということではないでしょうか。
海賊の腕(1974.1)漫画全集9巻・チャンピオンコミックス1巻掲載
復讐こそわが命(1979.1)全集7巻・コミックス19巻掲載
(第1話)医者はどこだ!
この作品は、B.Jの記念すべき、第1話目です。
大実業家ニクラの息子、アクドは、自分の無謀運転から事故を起こし、ひん死の重症を負う。
ニクラは、「金の力で直せないはずはない」と、世界中から、絶対に直せる名医を探し出す。
手術の天才、B.Jの初登場である。
B.Jは、「別の肉体があれば治せる」と言う、
そこでニクラは、事故の時たまたまそばにいた仕立て屋の善良な青年、デビイを金の力で有罪にして、
肉体を提供させる。
ニクラは自分の息子が「どうしようもない不良」だと知っていたが、息子を助けたい親心もあり、
「世間は善人だけのためにはできとらん」、「なにごとも金と力だ!」と言う。
B.Jは、どんな思いで聞いていたのだろうか?
結果、B.Jは「心も体も腐ってるやつは手術したってむだだ!」と言って、
こっそりデビイの顔を
アクドそっくりに整形し、助けることになる。
(この行為は、ニクラに、自分の息子は生きている、という希望をも、抱かせているのではないか?)
最後にデビイは「あの先生はきっと天使だね」と、つぶやく。
第1話にしてすでに、B.J本人も一見、悪人に見えるが、本物の悪や、権力(自分の信念に反するもの)には決して屈服しない
という彼の本質が描かれているように思えます。
医者はどこだ!(1973.11)漫画全集19巻・チャンピオンコミックス1巻掲載
(1983.10月)オペの順番
B.Jは、西表島から帰る船で、島をリゾート地として開発しようとしている代議士や、
イリオモテヤマネコの密猟者らと乗り合わせる。
密漁したイリオモテヤマネコの麻酔が切れて暴れだし、密猟者はあせって鉄砲を撃つ。
怪我をした代議士と赤ん坊、そして、イリオモテヤマネコの二人と一匹。
B.Jは、重態のネコから先に手術(オペ)をする、次に赤ん坊を・・・、
金は払ったが、一番軽症の代議士は後回しにした。
オペの順番で代議士に訴えられ、法廷で
「
人間と動物を同格に見ているのか?医者として、そういう主義なのか?」と問われたB.Jは、
「そうです。」と答えて有罪になる。
だが、代議士のガンを発見していて、手術と引き換えに、告訴の取り下げと、島の開発を白紙に戻す事を約束させる。
希少な天然記念物のイリオモテヤマネコと、その住みかである島の自然を救ったB.J。
法廷では、B.Jのオペの順番について、「異常で、非人道的」と言われたが、それは、自然や、
他の動物を省みない多くの人間の勝手な言い分なのかもしれない。
また別の「宝島」という話では、B.Jの莫大な手術費の使い道のひとつが、
「島に魅せられて、その自然を永遠に残そうと、あちこちの島を買い取っている」
ということも明かされている。
そして、悪党に向かって、「この空と、海と、大自然の素晴らしさのわからんやつは_____
生きる値打ちなどない!!」とまで言い放っている。
彼は、生命とともに、自然をもこよなく愛する男なのである。
普通の状況であったなら、B.Jも人間を先に手術したかもしれないが、
希少なイリオモテヤマネコと、自然をないがしろにし、
自分の事しか考えない代議士(軽症)という構図から、
B.Jの中ではネコの方が上だったんだろうな、と考えられる。
でも、もし自分が、ネコよりも先に手術してもえらなかったら、いやだろうなー・・・。
オペの順番(1983.10)漫画全集22巻・チャンピオンコミックス24巻掲載
宝島(1975.7)漫画全集7巻・チャンピオンコミックス11巻掲載